富裕層の膨大な資産運用・管理や事業支援を行うための部門が金融機関には存在し、それはプライベートバンキング部門(PB部門)と呼ばれています。これまで、PB部門に求められていたのは、資産を守ることと増やすことでした。しかし、近年は富裕層自身が資産を社会貢献に使いたいという要望が増えており、社会貢献する形で資産運用を引き受けてくれる部門の誕生が期待されています。
社会貢献したいけれど信頼できる相談先がない
富裕層は多額の資産を有しています。贅沢をしても使い尽くすことが難しいほどの金額ではありますが、生まれながらの富裕層はただ浪費するだけのお金の使い方に価値を見出しません。
できるだけ生きたお金の使い方を。お金の使い方に価値を求めるのが、富裕層の考え方なのです。だからこそ、これまでPB部門に求められていたのは、お金を働かせて増やすという資産運用でした。
一方で、富裕層は社会課題への関心が高く、かつ自身の資金を有効活用すれば社会貢献に繋がることを自負しています。人によって興味を持つ社会問題はさまざまですが、いずれにしてもそれらの解決に資金を投じる意欲の強い方は、皆さまの思っている以上に多いのです。
フィランソロピーとは?
富裕層が社会貢献をするにあたり、しばしば「フィランソロピー」という言葉が使われます。フィランソロピーとは、一般的には富を社会に注ぎ、社会的な問題の解決に努める行為のこと。「人間愛」や「慈善」と言い換えてもいいかもしれません。
フィランソロピーのやり方はさまざまです。多くの企業や富裕層は、寄付をすることで社会的な問題や地域の改善に寄与していますが、金銭的な寄付だけでなく、時間やスキルを提供する方もいます。
富裕層の間でフィランソロピーが重視される理由はいくつかあります。例えば、自分たちが得た富を社会に還元する手段としてフィランソロピーが選ばれます。「富を持つものには義務がある」という考え方を持つ方もいて、富を社会的な問題の解決に使うべきと考えているのです。
また、他者や社会への貢献は、金銭では決して得られない満足感や達成感をもたらします。人間は社会的な生き物で、周囲の人のために力を貸すことを喜ぶ性質を持っているのは間違いありません。これは富裕層だけでなく、どのような経済状況にある人々にも共通する動機でしょう。
社会貢献を支援する活動には需要がある
寄付をするにしても、投資するにしても、自力で事業を立ち上げるにしても、どのように実現したらいいのか、どこに投資たら良いのか、信頼できる相談先や投資先を見つけるのに苦労しているのが現状です。海外のPB部門がフィランソロピーをサービスメニューに含んでいることもあります。日本でもそのようなサービスはありますが、まだ広く行われてはいません。
より良い社会の実現に向けて、富裕層が自身のリソースを活用する流れは確実に進んでいるため、金融機関の新たな取り組みが期待されています。